やはり、好きだからですね。毎日、いろんな子の診察をしますが、自分も飼いたくなってしまうほど可愛いペットによく出会います。
これ以上自宅のペットを増やすわけにはいかないので、我慢がまんです。
この仕事をしていると、自分が飼わなくても、いろんな子に触れることができて楽しいですね。
性格にしても、怖がりな子、怒りんぼな子、愉快な子、人見知りな子、我慢強い子、物怖じしない子など、十人十色といいましょうか。
赤ちゃんだったペットの成長を喜んでみたり、だんだん老いていく姿を共に見届けることができるのは、獣医師ならではです。
もちろん、生き死にに関わるシビアな面も多々ありますが、楽しいペットとの生活の一部に関わることができるのが魅力です。
兄弟の影響ですが、気づいたら、乗馬をしていました。小学校1年生の頃からです。少しずつですが、中学まで続けていました。
なんてリッチなと思われるかもしれませんが、当時近所に、子供が無料で乗馬できる~ポニーですけどね~公園があったのです。
それこそ、学校が終わると毎日砂まみれになりながら馬場を駆け回っていました。
馬は面白いです。当たり前ですが、一頭一頭性格が違います。そう簡単には言うことを聞きません。
機嫌が悪かったり、ふざけていたり、いろんな感情があります。
その中で交わされる馬と乗り手とのやり取りが、とても面白かったのを覚えています。
残念ながら今はもう乗れませんが、いつかまた乗れるようになりたいですね。
犬との出会いですが、小学校3年生のとき、母親がシュナウザーをもらってきたのが始まりでした。
それがまた、ちっとも言うことを聞かない子で、僕が末っ子だったのもありますが、完全になめられているんですね。
思いっきり引っ張られながらお散歩していた記憶があります。子供ながらに、しつけの本を読んで勉強したのを覚えていますが、
なかなかうまくは行かなかったですね。試行錯誤してやっと、お手とお座りと待てを覚えてくれましたが、
犬は家族の中で、自分の順位というものにとても敏感なので、一番下にはなりたくないわけで、本当は僕の言いなりにはなりたくないのです。
おかしな話ですが、そんな中、犬の気持ちに触れることがとても楽しく感じられて、中学生の頃は、犬の訓練師になりたいと思っていたほどです。
いろいろあって大学進学時に獣医学部を選んだのですが、学年が上がり、授業が忙しくなると、大学付近に下宿するようになりました。
そこでアパートに来たのが、チイちゃんです。普通の雑種猫でしたが、猫を飼ったことの無い僕には衝撃でしたね。かわいい。
ねずみのおもちゃを投げると持ってきてはまた投げろと言いにきます。
とても、甘えんぼ。すねてみたり、喜んでみたり、感情豊か。野良猫しか見たことのない僕にとっては毎日が驚きでした。
一緒に寝て、勉強中は膝の上、一緒に遊んで、おしっこ漏らして喧嘩しての繰り返し。すっかり猫好きのできあがりです。
これまでいろんな獣医師に出会いました。人に好かれる獣医さんや、動物に好かれるというか、動物そのもののような獣医さん、医療に対峙して職人気質な獣医さん、いろいろです。結局、人柄というか人間味が現れやすい職業なんだと感じます。
人にも動物にもやさしくなれたら、理想の獣医さんに近づけるかもしれないとは漠然と思うのですが、やさしいってどんなことなのかが難しいですね。いろんなオーナーさんとペットがいますので、
それぞれに最善な対応を取れるように、自分自身の対応力を医療的にも人間性的にも成長させることが、やさしさなのではと今は思っています。
両方のバランスを大切にしていきたいです。オーナーさんに分かりやすく物事を説明する力が身につけば、トラブルが防げますし、やさしい対応につなげていけるのではないかと思います。
医療におけるオーナーさんの期待や常識は日々、とても早いスピードで変化しているのを感じます。
同じ病気でも、オーナーさんによって全く異なる治療法を選択されます。
また、ペットそれぞれの体質や性格によっても、治療法が異なるかもしれません。
オーナーさんとペットの両方に受け入れらえるように治療法をいくつか、提案するように心がけてきました。
そして、それぞれのメリットデメリットを十分お話して、最後はオーナーさんに選んでもらえるようにしています。
病気の種類にもよりますが、専門医による高度医療治療を紹介したり、自宅で点滴をする形で、通院を極力減らす方法をとることもあります。
迷ってしまう場合は、お勧めの治療法を紹介し、それで決めていただくこともあります。
医療ですから、良い結果が出ることもあれば、悪い結果が出ることもあります。
そのときに、一緒に悩んで決めた最善の方法であったならば、きっとオーナーさんの納得が付いてくるのではないかと考えます。
もともとは、山梨に縁もゆかりもない僕ですが、たまたま大学時代に仲良くなった山梨出身の友人により、
葡萄と鳥モツを与えられたことが始まりかもしれません。まさに、食べ放題の葡萄、桃。
富士山を望む自然豊かなこの土地に魅せられて、大学時代何度となく、山梨を訪れていました。
さらに、何の縁なのか、妻がたまたま山梨県出身でした。ここまでくると自然と、山梨に暮らそうと、思うようになるわけです。
自分の病院を開くわけですから、これから何十年も同じ場所に根を張って、診療ができるようになります。
やっとペットの一生に携われるようになりました。出産から立ち会っている子を、
老いていくまで十数年に渡って診ることができるのはうれしい事です。
2代目3代目のペットが続けて来院されるような、病院になりたいです。
今まで、勤務医として長い間、目の前の病気に向かい診療にあたってきました。
この期間で得たものは、獣医師としての経験を多く積む上でとても貴重で大切なものでした。
ただ、この間に結婚をし、子供を授かりと自分自身の生活も大きく変化し、一人の時間を医療に向けるだけでなく、
家族との時間を過ごすことで、より来院される患者さんのペット(家族)に対する愛情や感情を身近に感じ、
共感できるようになったことで、日々の生活の中で、動物や子供のニュースに自然と目がいくようになりました。
これからは、獣医師として医療面だけでなく、せっかく自分の好きな山梨で開業するのですから、
一匹でも多く一人でも多くの幸せな笑顔が生まれるような活動をしていきたいと思っています。
例えば、ペットを飼ってらっしゃらない方の動物への理解を深め、ペットを飼ってる方にはマナーの理解を深める活動。
院内セミナーや小学校への特別授業を積極的に行い、子供たちが学校帰りに拾った子猫を気軽に連れてこられるような
環境づくりを行い、一緒に新しい飼い主さんを探す活動など地域のボランティア活動にも参加することで、
地域全体で動物や子供たちを見守るお手伝いがしたいと考えています。
最終目標は、自分が白髪頭になる頃には、「おっちゃんーー!」と子供が集まり、みんなで温かいご飯を食べて、
一緒に里親探しのボランティアしたり、宿題したり、色々一緒に悩んだりと、動物と子供の夢や未来を“つなぐ”存在になりたいです。
そんな僕にとっても夢のような日が来るまでは、獣医師としての基本である〝命をつなぐ〟〝ペットとご家族の心をつなぐ〟お仕事に
向き合い、勉強し続けたいと思います。